このホームページに来てくださった方の中には、「なんで自転車がそんなに好きなの?」という方もおられると思う。そんな方でも自転車が好きになれるよう、ここでは自転車の魅力について説明しよう。
ママチャリ(シティサイクル)はほとんどの人が乗ったことのある自転車だ。特に小中高生時代に通学や近所へ移動する際の足として利用している・したことがあるだろう。
でも、ママチャリのイメージは歩行者+αみたいな感じで、ペダルを漕いでも重たいし、坂では失速または降りて押さないといけない。さらにはダサい?と思われている方も多いのではないだろうか。
実はこれにはきちんとした理由(ワケ)がある。
車は軽ければ軽いほど同じエンジンでも加速・燃費・減速において有利になる。もうすこし分かりやくすると、荷物を入れたリヤカーを引っ張るイメージをしてほしい。リヤカーに10kgの米袋を1つ入れるのと、2つ入れるのでは前者のほうが少しのエネルギーで引っ張ることが出来る。物体は重量が軽いほど低エネルギーで運動できる。
それではママチャリはどうなのか?ママチャリを両手で持ったとき、重いと感じたことはないだろうか。実はママチャリを構成する主な金属のほとんどは"鉄(スチール)"で出来ている。鉄は安価で加工も容易だが、他の金属(アルミ・カーボン・チタンなど)に比べ重たく、強度も低い。同じ形で強度を得ようとすると、多くのスチールを使わないといけない。
ママチャリが重たい理由はスチールを使っているためである。
ではなぜわざわざ重たいスチールを使うのかというと、コスト面で有利だからである。最近はホームセンター等で中国製1万円以下のママチャリを目にする。実売価格1万円以下ということは輸送費・利益・人件費を考慮しても5000円以下で作っていることになる。5000円の予算でアルミを使うことなど到底できない。安価なスチールが大活躍するのだ。
それでも多くの人は値段の魅力にひかれ、重たい自転車を購入してしまう・・・
でも、ママチャリの有用性はちゃんとある。ママチャリをよく観察してみよう。
荷物を入れつためのカゴが最初から付いていて、チェーンガードもあり、泥除け、スタンド、ライトまで標準装備だ。じつはこれは実用面では非常に有用。スポーツタイプの自転車ではこれら5点が最初から付いていない。近所への買い物や通勤・通学には非常に都合が良い。もともとこういった用途で開発されたものなのだ。
ママチャリを車に例えると、軽トラックの用な感じ。
「車=みんな軽トラックと同じ」だと考えているはいないと思うが、「自転車=みんなママチャリと同じ」と考えている人が実はたくさんいる。これは大きな間違い。ママチャリは荷物の積載性や乗りやすさに重点を置いたため、走行性に関しては最低ランクの乗り物だ。「本来自転車が持っている走行性を犠牲にした乗り物=ママチャリ」という考えがしっくりくる。
それではママチャリじゃないスポーツタイプについて。
スポーツタイプは(サス付きは重たいが、サスのないクロスバイクやロードバイクは)一般的に重量が軽い。前項で軽さの利点については述べているが、これは金属がアルミ・カーボン・チタン等を使っているため。軽くて丈夫な素材はスポーツタイプの自転車に向いている。さらに多段数の切り替えを装備し、同じ力でもトルク重視・スピード重視と臨機応変に対応できる。(最近ではママチャリに「シマノ製 外装6段付」とうたうものがあるが、あれは最低ランク品。シマノは世界シェアNo1のメーカーで高級品から低グレードまで何でも作っている。)
さらに適度な前傾姿勢を取れることによって、上半身が固定され下半身に力が入りやすくなる。ママチャリでは楽に乗ることを重点としているため、姿勢が垂直なのだがこれにも理由があったのだ。あの乗り心地のよさそうな大きなサドルは、重心が一点に集中するために大きくなっている。
タイヤの空気圧もスポーツタイプはパンパンで、クロスバイクでも6k~8k入るものが一般的。これは車の3~4倍にもなり、空気圧がいっぱいあれば路面とタイヤの接地面積が減少し、抵抗が少なくなって軽いペダリングを実現している。
車重が軽い+路面抵抗が少ない、そして多段数ギアによってペダリングが非常に楽チンだ。ママチャリとは次元が違う。ママチャリしか乗ったことがない人にとっては新鮮で、楽しい。自転車の魅力はスポーツタイプに隠されている。
スポーツタイプ自転車を車に例えると、スポーツカーになる。もちろん動力は人力なので限界はあるが、重たいママチャリと比較すれば十分スポーツカーだと言える。
スポーツタイプはママチャリしか知らない人にとって馴染みないものだが、実はスポーツタイプこそ本当の自転車の形である。ママチャリとは本来の自転車の性能を犠牲にして、気軽に乗れるようにした自転車である。
日本の自転車は「ママチャリ文化」と例えても良いぐらい、ママチャリが浸透した国だ。
多くの人は安いママチャリしかのらず、ママチャリの性能こそ真の自転車の姿だと誤解していまい、車や他の交通へシフトする。
それには安い自転車(ママチャリ)が出回っていることと、自転車の乗る環境が整っていない(自転車専用道路)ことが大きな要因だ。
さらに最近残念なのは"スポーツタイプもどき"、"なんちゃって自転車"が低価格で市場に出回っていること。「自転車の種類」で述べているようにこれらは粗悪品とよばれ、見た目だけでしかない。スポーツタイプのくせにスチールフレームの為重たく、スポーツタイプの魅力である"軽いペダリング"やスピード感がいまひとつだ。
もちろん、もどき品であることを理解して買うのなら問題ないが、スポーツ自転車だと思い込んで買った自転車が、実はもどき自転車で、「あぁ。やっぱり自転車ってこんなもんだったか」と思われていしまうこと。
せっかく自転車に乗るきっかえがあったにもかかわらず、間違った商品による間違った理解で自転車に乗らなくなってしまう。これは非常に残念な話である。スポーツタイプもどきは日本の自転車文化にも悪い影響を与えてるのである。
それでも最近、道路環境をみれば、日本はようやく自転車道路整備を行うようになって来た。化石燃料を消費し、渋滞を引き起こし、エネルギー効率の悪い自動車社会から脱却しようと先進国では整備が進みつつある。
日本でも自転車の良さが見直され、自転車にやさしいまちづくり・環境の整うことを自転車好きとして願ってならない。